AIに3DCADによるモデリングはどの程度できるのか(2026年上期現在)

先日(といっても1か月くらい前ですが)勢いあるAI企業ことAnthropicからClaudeのクリエイティブ向けのコネクタがリリースされました。1 この中にはAutodesk社の3DCADであるFusion向けのコネクタも含まれています。
要するにFusionがAIツールであるClaude経由で使えるようになったということです。ということはAIにお願いすれば欲しいモデルを作ってもらえるということになります。果たしてそんなにうまくいくのか、実力はどれほどなのか、実際に使ってみました。

前提

  • 筆者
    • 工業大学卒業(修士)。サークルや授業や研究などで3DCADをずっと使っていた。現在はメーカーに勤務しており、業務でもCADを使用している。3次元CAD利用技術者試験 1級
  • Fusion
    • 学生や教育機関、非営利団体の方であれば無料で利用できる機械設計向けの3DCAD。無料で使えるというだけあって機能や性能は控えめ。個人的には趣味で使うのであっても厳しい部分があるが、無料なので仕方がない。
  • Claude
    • 現在非常に勢いのあるAIツール。チャットでおしゃべりする機能に加えてCoworkという外部のツールと連携していろいろな作業を指示通りやってくれる機能もある。今回はこのCoworkを利用してFusionと連携して3Dモデリングをやらせてみる。

以上を踏まえたうえで、実際にClaudeとFusionを連携させてみます。

Claudeのインストールと課金

ClaudeはWeb上でも使えますが、Fusionと連携させるにはデスクトップクライアントをインストールする必要があります。ダウンロードしてインストールします。

また、今回使用するFusionコネクタは有料プランでないと使用できないようです。一番安いプランでも良いので契約する必要があります。
どうしても無料で試してみたいという方はClaudeをすでに契約している人にお願いするとClaude Coworkの1週間無料トライアルを発行してくれるかもしれません。 私の知り合いであれば連絡を貰えればClaude Coworkの1週間無料トライアルの招待リンクを発行します。これを使えばおそらくFusionと接続できるようになるのではないかと思っていますが、やったことがあるわけではないので確かな事は言えません。私は責任をとりませんので試す方は自己責任でお願いします。

ClaudeとFusionの連携

ClaudeとFusionのボタンをポチポチすればできます。 詳しいやり方はAIに聞けば教えてくれるので割愛します。最近のAIは賢いです。

操作をやらせてみる

実際にClaude経由で指示を出してFusionのモデリングをやってみます。

基本的な指示、例えば「原点と(10,10)を頂点に持つ正方形をスケッチし、それを34mm押し出して」や、「できた立体の中央にz軸と並行になるような貫通穴を開けて」といった指示には問題なく対応できていました。指示した通りにモデリングできているか画面をキャプチャして確かめ、問題があった場合は手順などを見直して対応しているようですね。非常に安定感もあり、指示通りのことをやってくれるという安心感はあります。

ただ、このあたりは想定内ではあります。明確に指示を出せばそのとおりコマンドを生成するのは(現状のLLMの性能からすると)そこまで難しいことではないので。
CADを触ったことがない人や初心者には嬉しいのかもしれませんが、ある程度CADが使える人にとってはこれが役に立つ場面は限られるかなというのが正直な印象です。CADの操作は分からないがとりあえず形を作りたい、みたいな人には自然言語で指示できる嬉しさはあるのかもしれません。

しかしどのような操作をすれば目的の形状が作れるかはCADに慣れていないとわからない、みたいなところはあると思うので、ある程度のところで限界が来るのではないかというのが率直な感想です。また、CADで直接操作するより遥かに時間がかかるので、ちょっと追加工するとかの用途であれば問題はないでしょうが、凝った形状を作ろうとすると非常に長い時間がかかるのでそういう意味でも厳しいかな、と。

目的のものを指定してつくってもらう

どっちかというと出来て嬉しかったりすごいと思ったりするのはこっちですね。
いわゆるバイブコーディング的な感じで〇〇が欲しいと言ったらその通りのモデリングができている、というイメージです。これであれば手順などをいちいち指示しなくて良いので、本当にCADがわからない人でも使えると思いますし、CADが使える人であっても、(ちゃんと言った通りのモデルがそれなりの速さでできるのであれば)最初の方の作業を任せて後で細かい部分を手直しするなど、使い所はあると思います。

今回は机の上などで使用する「ブックスタンド」のモデリングをLLMにやってもらいました。書見台などとも言われる、本を開いた状態で読みやすい角度に立てて固定できるようにする道具です。1枚の金属板を切ったり曲げたりして作るという想定です。

細かく指示をするようではあまり意味がないので、以下のような粒度のプロンプトでやってもらおうと思います。

Fusion360でブックスタンドを設計してください
板金で制作し、切り起こしなどを使用して1枚で制作できるようにしてください
デザインも意識し、モダンでスタイリッシュなデザインとしてください

実際にやってみたところモデルの性能によって顕著に差が出たので各モデルの特徴を書いていこうと思います。

Sonnet4.6

ブックスタンドの概念は理解しているようですが、どうやって作るかという部分に関しては知識が足りていない印象です。なにやら空中に突如構造物が現れたり、無を支える柱が出現したりと、なかなか斬新なモデリングを披露してくれました。細かく指摘していけば、もしかしたら使い物になるものになるのかもしれませんが、面倒すぎるしそこまで手間をかけるのは本末転倒なのである程度触ってみたところで諦めました。

板金とは…(哲学) これは… 板金では… 作れないよ……

Opus4.7

流石、世間から評判良いモデルというだけあってブックスタンドが全然作れないということはありませんでした。 一応板金という概念も理解しているようです。
しかしながら、なかなかこの世の中で成立する形状にならない… 展開できない形状、それも金型的に難しいとかではなくて物理的に成立しないような形状を出してきたり、本をおいたら一瞬で倒れそうな形状を出してきたり、といった感じです。この世の中の物理法則への理解がイマイチな様子…
とはいえSonnetよりはだいぶなんとかなる感じはあり、色々とダメ出しをしたら一応なんとか使えそうなものにはなりました。 何回も指摘しないといけないので、あまり実用的ではないですが…

なんか割とブックスタンドっぽい 手前の切り起こしとかは成立していないですが、まぁこのくらいの修正なら……

Opus4.8

なんかOpus4.7より性能の上がったOpus4.8がリリースされたのでこちらでもやってみました。
世間での評判は4.7と大して変わらないというのが多かったので期待していなかったのですが、思ったより良かったです。 良くない点を指摘したらすぐその意図を理解して修正してくれたので、4~5回の指示である程度使えそうな形になりました。だいぶこの世の中の物理法則もわかっていそうな感じではあります。
ただ、CADのモデリングは苦手そうで寸法をあわせるのに無限に苦しんでいました。 やり方を教えたら一発で対応できていたのでだいぶ期待はできそうです。

これならだいぶ使えそう ところどころ修正が必要な場所はありますが、このくらいであれば許容範囲ですね。

で、まぁこんなもんか~と思っていたら先日、何やらFable5という非常に強力なモデルがリリースされたということで、評判も良いらしい。 このブログもリリース寸前でしたが急遽Fable5も試してみます。

Fable5

これは非常に性能が上がっていて感動してしまいました。なんと一発で使い物になるものが出てきました。 少し曲げの部分のフィレットがおかしかったので修正を依頼しましたが、一発で修正し、問題ないモデルが完成しました。
Opusのモデリング結果は、要件はみたしているけど…という感じでしたが、今回のモデルはシンプルで目的にもかなっており、あまり文句の付ける部分がありませんでした。

このくらいの性能があれば、部品を取り付けるブラケットや治具などは問題なくモデリングしてくれそうな印象です。
状況にもよりますが、プロトタイプ制作のような現場においてとりあえず部品を固定するパーツがほしい!みたいなニーズであれば十分満たせるのではないかと思います。重要度の低いパーツであればAIに丸投げして結果だけ採用可否を判断するというのも十分現実的です。

え、このモデルが一発で!? 探せば不備はあるかもしれないですが、このモデルを一言で作ってくれるなら十分でしょう

Fable5で追加実験

Fable5の圧倒的な性能向上を見たので、このモデルはどこまで行けるのか気になって実験してみました。 単純な図形の組み合わせできるモデリングは問題なくこなせそうなので、3DCADでは一般に難しいとされるモデルをモデリングさせてみます。

今回は題材を「猫」としました。エジプトの猫の像(バステト神)の写真があったのでこれを参考にするように言ってモデリングしてみました。結果は…

これはバステト

なるほどね、特徴は掴んでいますが、顔とかはさすがに厳しいか…

流石に画像1つだけで複雑なモデルを完璧にモデリングさせるのはハードルが高すぎた感あるのでニンゲン(筆者)がモデリングした猫を見本にしてモデリングしてもらうことにします。Claudeはコネクタ経由でこのモデルを自由に回転させて見ることができるので、もう少し猫に近づくのではないかと。 こちらの猫、私が十数時間かけてモデリングしたものなので、これを一瞬で作ってくれれば、だいぶ嬉しいですが。 ニンゲン製の猫のモデル 上記の3Dモデルを参照させて同じものをFable5に作らせた結果は… 見本を真似た結果

割と猫に近づきましたね。凹んでる部分の解釈はいまいちですが、これはニンゲンも難しい部分はあるので致し方ないところはあるのかと… 画像しか参考にできないですし。 しかしニンゲンとはモデリング速度が全然違うのでとりあえず原型を作らせるとかの用途では全然使える気がしますね。 数十分で上記モデルが出てくるわけなので、使い所は選ぶにしろ、利用価値はあると思います。

まとめ

ClaudeにFusionと連携できるコネクタが出たということで、実際のどの程度使えるか試してみました。
少し前まではLLMに3DCADはまだ早い、という印象でしたが今回の結果からLLMが3DCADを扱える時代はもう来たなと感じました。

コーディングにおいてはLLMはもはや十分に実用的なコードを出せるレベルにまで達しており、いくらかの課題はあるにせよ、細かいタスクであれば丸投げして人間は最終チェックをすれば良いという状態になっています。モデリングにおいても、一般的な形状や既存の形状の派生などであればLLMが十分に実用的なモデルを出力したり加工する、というのは可能になっていると思います。
とくに、Fable5であれば単純な形状の組み合わせでできている部品やそのアセンブリなどであれば十分な作業できるのではないかと思います。 もっと大規模なアセンブリを作っている例もちらほら見るので、実際どのくらいいけるのかはどこかで検証してみたいですね。

一方で、モデリングした結果を評価する方法についてはまだ課題も感じます。コーディングであれば構文解析やテストなど、生成したコードを評価する方法はいくつかありますが、3Dのモデルに対しては直接有効な解析となるものはあまりない印象です。現状は様々な方向からの画像のキャプチャという方法を取っていますが、これだと複雑な形状に対応が難しいのと、強度など現実世界で物体が成立するための要件を検証することができません。
もちろん、有限要素解析などはありますが、これらは解析に時間がかかるため、結果をLLMにFBしてモデリングをやり直す、という手法を取るよりもモデリングの段階で変化させるパラメータを絞ったうえで数理最適化などに落とし込むほうが形状を作るという意味では有効な気がします。
このような観点からコーディングなどでよく行われているハーネスを組んで成果物を自律的に改善していくループを回して最終成果物を出力する、という方法では不十分であり、もっと別のアプローチが必要そうな気がしています。

しかしながら、LLM及びその周辺を取り巻く技術の進化は凄まじいものがあるので、1年も経てば状況が大きく変わることも十分にありえます。
今後の進化に期待するとともに状況を注視していきたいと思います。

参考